資産運用からの良いご提案
自己株式取得は、経営陣からマーケットに対して自社の株価が低いというメッセージを伝えることにもなります。
優先株式とは、種類株式の一種で、配当・残余財産分配について普通株式に比べて優先権を持つ株式です。
これらの権利について優先権を持つ一方で、議決権のような権利は制限されるのが通常です。
また、発行にあたっては一定期閉経過後に流動性を高めるために普通株式へ転換するという条項が付されているケースも少なくありません。
1990年代後半から2000年にかけて、金融支援の一環として上場企業における優先株式の発行は一気に増加しました。
しかしながら、近年の株価の上昇で優先株式から普通株式への転換が進み、市場における普通株式の需給バランスが崩れることで、希薄化、株価低迷の負担を既存株主に強いる可能性が高まっています。
また、優先株式を保有する金融機関側としても、2007年度の改正BIS規制において優先株式のリスク評価が2倍に高まることが決まってしまったため、自己資本比率の捜損を避けるために優先株式の消却を企業側に求めているという事情もあります。
そこで、過去に優先株式を発行した企業は優先株式の消却の検討を余儀なくされているのが実態です。
最近の主な優先株式の消却事例です。
しかしながら優先株式の消却にあたっては、数十億円から数千億円単位の原資が必要となります。
新たな融資や社債発行によって資金調達を行った場合、格付け低下など新たな問題を引き起こしかねないため、各社ともに優先株式の消却原資の調達に頭を抱えているのが現状です。
有利子負債ではなく、これまで見てきた事業用不動産、非事業用不動産などのオフバランス化によって調達した資金をもって、優先株式の消却の原資にすることは、これまで見てきた通り株主価値の向上に働くこともあるため、大いに検討の余地があります。
企業価値をあげるキャッシュの活用方法のひとつとして、退職給付制度(年金制度・退職一時金制度)におけるキャッシュの活用があげられます。
退職給付制度へのキャッシュの活用とは、企業にとって、従業員に対する労働債務である退職給付債務に対し、資金手当てをしていこうとするものです。
最近ではN自動車が2005年7月に、現金2.280億円を退職給付信託に拠出し、順次年金制度の掛金として拠出していくことで、同社の懸案事項だった年金問題を解決したことが話題になりました。
退職給付債務(PBO) とは、企業が従業員に対し将来支給する必要がある退職給付の現在価値のことです。
これは従業員に対する借入金だと言えるもので、年金資産による資金手当てがされていることが望ましいと言えます。
しかし多くの企業でこの退職給付債務に対して年金資産が下回る状況となっており、2005年度時点で上場企業の退職給付債務約80兆円に対し、年金資産は約60兆円であり、20兆円程度不足が生じています。
この退職給付債務に対する積立不足は、将来必ず支払いが必要となり、かつ、利息により増加する観点から、広い意味での有利子負債といえます。
積立不足から発生する利息費用分は、人件費として企業が負担することとなり、売上原価、販売管理費の増加要因となります。
そこで不動産売却代金などのキャッシュを活用し、積み立て不足を解消することで(広義)有利子負債の圧縮運用益による人件費の軽減積立水準の向上への寄与に繋がり、企業価値を上昇させることになります。
キャッシュを活用した年金制度及び退職一時金制度における退職給付債務に対する積立不足を解消する方法には年金制度に掛金拠出する方法や退職給付信託へ資金拠出する方法があります。
年金制度への掛金拠出は、拠出額が全額損金になりますが、一度に拠出できる額は制限されています。
ただし、確定給付型の年金制度における財政検証(非継続基準)に抵触した場合や、確定給付型の年金制度から確定拠出年金制度への移行の場合等において、積立不足の大部分を一度に解消する資金手当てが可能または必要になる場合もあります。
の退職給付信託は拠出額が損金になることはないものの、一度に拠出できる額の制限が緩いため、一度に積立不足を解消することも可能になります。
企業側では、資産を拠出した時点で資産と退職給付引当金は相殺されてオフバランスとなります。
また、退職給付の積立不足は説明した通り、株主価値を計算する上では有利子負債と同様に取り扱われます。
多額の退職給付の積立不足のある会社の格付けは低くなり、有利子負債コスト、株主資本コスト双方の資本コストの上昇を招きます。
退職給付信託の拠出により退職給付の積立不足を解消することで、資本コストが低下し企業価値が向上する効果も期待できますここでは、企業価値向上の一環として行うM&Aの際の留意点を述べたいと思います。
M&Aで事業や企業を統合する主な企業再編手法としては、株式取得、合併、株式交換、会社分割、事業譲受があります。
なかでも、株式受換は自社株式を対価に企業買収(子会社化)を行う方法であり、手元にキャッシュがない場合でも比較的容易に実行にうっせるM&A手法です。
1999年の商法改正によって制度が導入されて以後、新興企業などM&Aによるグループ規模の急拡大を図りたい企業が、打ち出の小槌のように使う手法として普及が進んできました(2007年より株式突換の対価は柔軟化され、自社株式に限らず、金銭、親会社株式、その他の財産とすることも認められます)。
しかし、株式受換や合併のようにキャッシュを用いず自社株式を対価として行うM&Aは、発行済株式数が増加するため既存株主にとって持分(議決権比率)の希薄化は避けられません。
企業からしてみれば株主構成が大きく変わるため、安定株主対策があらためて必要となるというデメリットがあります。
また、合併比率・株式受換比率によっては、再編後の1株あたり株主価値が希薄化(減少)することも十分に考えられます。
図表13-4をご覧ください。
A社の株主価値は200億円、ところがA社の株式市場における評価は低く、時価総額はその半分の100億円(発行済株式総数10,000株、株価100万円)であったとします。
このA社が、株主価値100億円に対し時価総額が100億円(発行済株式総数10,000株、株価100万円)のB社を、株式突換によって100%子会社化することを決断したとします。
このケースでは、時価総額100億円のB社を、1株100万円のA社株式を対価として買収するわけですから、B社の時価総額100億円+A社の株価100万円=10,000株のA社株式の発行が必要です。
B社の発行済株式総数はちょうど同じ10,000株ですから、B社株式1株あたりA社の株式を1株(交換比率1倍)割り当てることにします。
なお、交換比率の算定にあたっては、株価のほかに両者の株主価値等も考慮に入れますが、市場の評価である株価を最重視するのが実務上は一般的ですので、ここでは両者の株価のみによって交換比率を算定すると仮定します。
この再編によって、完全親会社A社グループの株主価値は300億円、時価総額は200億円に増えることになります。
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